予測「精度」の意味

 予測の「精度」と一口に言っても、厳密には2つの意味(側面)があります。 
 ひとつは分析をいかに精緻に行い結果を出すかという「分析(設計)精度」、もうひとつが分析した結果(予測モデル)をいかに正確に運用し意思決定するかという「運用(結果)精度」です。

 ここで大事なことは、「予測が当たった、外れた」と言っているのは、実は運用精度を指してのことなのです。

 したがって、予測の精度を高めるには単に分析・計算上のことだけではなく、出来上がったモデルをしっかり運用できるような本部の組織づくりや意思決定の方法にまで配慮しなければなりません。
 私がアドバイスをしたあるスーパーマーケットチェーン場合は、それまでの「声の大きい意見が通る」開発の意思決定過程を全面的に改め、客観的な予測数値をベースにした意思決定に転換しました。そのルールは以下の通りです。

1.店舗の出店意思決定に際して、自社独自のオリジナルモデルを完成させ、それをベースに売上予側を客観的に行なう。

2.出店意思決定会議では、あらかじめ担当役員が実地検分を済ませた上で、モデルにより算出された基礎数値を出発点とし、それに駐車場を基準以上持つことによる加算や商圏分断による減算などの調整(会議の席上で意見を出し合う)を行ない、予測売上高の検討を行なう。

3.出店が意思決定された場合、そこで予測された売上高は「オープン後2年目の売上予算」として開発部門・営業部門で共有化される。

 この方式を導入してから、数十店舗の予測を行い新規出店しましたが、予測より売上実績が5%以上下回った店舗は一店舗もないということです。さらに数年前には、予測のスピードアップのために、それまで手作業で行っていた内容をそっくり同じように行なえるGISシステムを開発、導入しました。

 このことが意味するのはどういうことかといいますと、出された予測値にはきちんとした意味があるわけですから(声の大きい人の独断と偏見ではない)、このチェーンでは開発部門のみならず営業部門の担当者も予測された数字の重要性をしっかりと認識し、売上予算の達成に向けて全力で取り組む体制ができあがった、ということに他ならないのです。

 不幸にもいい加減な売上予側値しか算出できないとなれば、開発部門は「もっと売れるはずだ」、営業部門は「そんなに売れるはずがない」という従来の水掛け論に終始してしまい、できあがった売上予算も投資条件から単に追ってきただけの「絵に書いた餅」の域を出ないものになる、ということです。