売上予測モデル構築のポイント

 売上予測モデルを構築することは、決して難しいことではありません。順を追ってひとつずつ進めていけば、自社に合ったモデルができあがります。 以下にモデル構築にあたっての要点を簡潔にまとめました。 

1.使える仕組みを構築する

 まず大事なことは、最終的に”現場で使える仕組みを構築する”ということです。目的と手段を混同してはいけません。データ収集や分析手法はあくまでも手段です。それらに溺れて最終目的(優良店を出店するということ)を見失ってはいけません。そのためには、現場の立地開発担当者が納得・理解して使えるようにつくることが大前提になります。 

2.自社データこそが宝の山

 モデルの構築にあたっては、自社の内部データが重要な役割をもってきます。外部の統計データだけでは売上予側モデルを作ることはできません。自社独自の内部データや調査(実査)データがあってこそ、精度の高いモデルができます。他社が作ったものをそのまま使えないか、と考える方がいますが、それは大きな間違いです。 

3.統計データのスピーディーな入手

 これまで、外部の統計データは役所や商工会議所などに出向いて入手していました。しかし、今ではGIS(地図情報システム)を利用すれば瞬時に必要な統計データの検索と集計が可能です。機械(マシン)にできることはそれに任せ、人(マン)が介在しないとできないことに集中することが重要です。統計の収集にかけていた時間を実査に振り向けることです。これからは足で稼ぐ情報がより大事になってきます。 

4.プロジェクトチームの編成

 モデルの構築にあたっては、そのための組織体制作りも重要です。そのためには、ある一部門のみで携わるのではなく、開発部門・営業部門・情報部門・人事教育部門などを横断した社内プロジェクトチームを編成します。メンバーには、店舗開発担当者、店舗運営経験者(店長経験3年以上)、人材教育担当者などの中堅世代を中心とし、パソコンを扱うことに抵抗のない柔軟性を持った人材を起用します。
 また、このプロジェクトチームでは、ベテランの立地開発担当者の経験則(立地を判断するときの目の付け方など)をしっかりと拾い上げておくことが肝要です。ベテランの立地判断はアナログ的なところがありますが、一方ではズバリ本質を突いています。それらの情報をプロジェクトチームで細分化しデジタル化することによって、有効なモデルができあがります。 

5.実査とデータの数値化

 プロジェクトメンバーでブレイン・ストーミングを行ない、考えられる立地データ項目を洗い出します。そして、洗い出されたデータの定義づけを行ないます。例えば『商圏人口』という項目に対して、半径を何㎞に決めるのか、単純に総人口でよいのかさらにターゲットを絞り込んだ20代の女性人口にするのか、といった内容です。
 次いで、データ収集方法を明確に定めた「実査基準書」を作ります。例えば、『動線評価』という項目に対しては、「良好(3点):候補地が商圏内の主動線(生活動線)上にある、普通(2点):主動線上にないが、主動線からのアプローチは容易である、難あり(1点):動線からは外れている」という具合です。この実査基準書をどれだけきちんと作れるかが、精度の高いデータ収集の要になります。 

6.分析手法の習得

 そして、収集されたデータをもとに、いよいよ「重回帰分析」などの多変量解析手法を用いて予測式をつくります。そのためには、最低限の統計知識を習得する必要があります。
 パラメーター算出の計算はパソコン上で行ないます。操作は決して難しいものではなく、エクセルなどの表計算ソフトに標準で備わっている「回帰分析」の機能を用いて行います。 

  ▼重回帰式

7.分析の手順

表計算を使った分析の手順は次の通りです。

ア) 各々のデータの平均値、最大値、最小値、標準偏差などの基本統計量を計算し、データの特性を頭に入れる。

イ) 全変数間の相関行列を出し、売上高とどの変数の相関が高いか、各々の説明変数間で相関が高い(内部相関が高い)ものはないか、などについて分析する。

ウ) 重回帰分析に投入する変数を決定し、計算→結果解釈→変数変更→計算→結果解釈→変数変更→・・・の試行錯誤を行ない精度の高いモデルにブラッシュアップしていく。